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その虫さされ、様子見で大丈夫? ― 受診の目安を内科・アレルギー専門医が解説

身近だけれど、あなどれない「虫さされ」

暖かい季節になると増えるのが「虫さされ」のご相談です。多くはかゆみや赤み、腫れといった皮膚の一時的な症状で、数日で自然に治まります。しかし虫さされの中には、全身に及ぶアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こすものや、あとから感染症を発症するものもあり、「たかが虫さされ」と油断できないケースもあります。
このコラムでは、内科・アレルギー科の視点から、身近な虫さされの症状と対処法、そして「これは受診したほうがよい」というサインを整理してお伝えします。

虫さされで起こる「2つの反応」

同じ虫に刺されても、症状の出方には個人差があります。これは主に、虫の唾液や毒の成分に対するアレルギー反応によって症状が起こるためで、大きく2つのタイプがあります。

・即時型反応:刺された直後から数十分でかゆみや赤い膨らみ(膨疹)が出るタイプ。

・遅延型反応:刺されて半日〜翌日以降に、赤い腫れやかゆみ、しこりが強く出るタイプ。

小さなお子さんは遅延型が強く出やすく、腫れが大きくなることがあります。同じ虫でも、刺された回数や体質によって反応の強さは変わります。

身近な虫と、その症状

蚊(か)

最も身近な虫さされ。かゆみと赤い膨らみが出ます。掻き壊すととびひ(伝染性膿痂疹)の原因になることもあるため、掻かないことが大切です。

ブユ(ブヨ・ブト)

渓流沿いや山間部に多く、刺されると出血をともなう小さな傷ができ、あとから強い腫れとかゆみ、時に水ぶくれが出ます。遅れて悪化しやすいのが特徴です。

アブ・毛虫(チャドクガなど)

アブは皮膚を噛んで吸血するため痛みと腫れが出ます。毛虫は毒針毛に触れることで細かいブツブツと強いかゆみが広がります。触れた衣服はそのまま着ず、洗濯しましょう。

ノミ・トコジラミ

主に足首やすねなど下半身に、赤いかゆい発疹が複数まとまって出やすいのが特徴です。

ムカデ

咬まれると激しい痛みと腫れが出ます。まれに全身のアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こすことがあり、注意が必要です。

【特に注意①】ハチ
命に関わるアレルギー反応を起こす虫

ハチ刺されは、虫さされの中でもアナフィラキシー(全身性の重いアレルギー反応)を起こす代表格です。人を刺すことがあるのは主にスズメバチ・アシナガバチ・ミツバチで、毒の強さはおおむねスズメバチ > アシナガバチ > ミツバチの順とされています。

ハチは「2回目以降」が危険です。 1回刺されると体の中でハチ毒に対する抗体ができ、次に同じ種類(または成分の近い種類)のハチに刺されたときに、強いアレルギー反応が起こることがあります。特に1〜2年以内の再刺傷はリスクが高いとされ、スズメバチとアシナガバチは毒の成分が似ているため、種類をまたいで反応することもあります。日本では毎年およそ20人前後の方がハチ刺されで亡くなっており、その多くがアナフィラキシーによるものです。

刺された場所の痛み・腫れだけなら局所の反応ですが、次のような全身症状が出たら、ためらわず救急車(119番)を要請してください。

・全身にじんましんが広がる、強いかゆみ
・息苦しさ、のどが締めつけられる感じ、声のかすれ
・腹痛、吐き気・嘔吐
・めまい、冷や汗、顔面蒼白、意識がもうろうとする

ハチ毒によるアナフィラキシーは刺されてから10〜15分ほどで急速に進むことがあり、スピードが速いのが特徴です。過去にハチ刺されで全身症状を起こした方や、屋外の仕事・アウトドアでハチに刺されるリスクが高い方には、緊急時にご自身で使えるアドレナリン自己注射薬「エピペン®」の携行が勧められることがあります。

(詳しくはアナフィラキシーをご覧ください)

【特に注意②】マダニ
あとから感染症を起こすことがある虫

マダニは草むらややぶに生息する大型のダニで、皮膚に口を突き刺して数日間にわたって吸血します。刺されても痛みがなく気づかないことが多いのですが、問題は刺された数日〜2週間後に感染症を発症することがある点です。

マダニが媒介する感染症には、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)や日本紅斑熱などがあり、いずれも岡山を含む西日本で毎年報告があります。発熱、倦怠感、消化器症状などが後から現れ、重症化することもあるため、油断できません。

吸血中のマダニを見つけても、無理に引き抜かないでください。 口の一部が皮膚に残ったり、マダニの体液(病原体を含むことがあります)が逆流したりする恐れがあります。医療機関で安全に除去してもらいましょう。そして、マダニに咬まれたあと数週間のうちに発熱などの症状が出たら、「マダニに咬まれた」ことを必ず伝えて受診してください。早期の対応が重症化を防ぎます。

基本のセルフケアと、受診の目安

軽い虫さされのセルフケアは、「洗って・冷やして・掻かない」が基本です。刺された部位を流水で洗い、冷やしてかゆみをやわらげ、市販のかゆみ止め(抗ヒスタミン薬・ステロイド外用薬)を使います。掻き壊すと悪化・化膿するため、爪を立てないようにしましょう。

次のような場合は、市販薬で様子を見ずに医療機関を受診してください。

  • 全身のじんましん、息苦しさ、めまいなど全身症状がある(→ すぐ救急要請)
  • 刺された範囲を超えて腫れがどんどん広がる、強い痛みや熱をもつ
  • 化膿してきた、水ぶくれが強い
  • マダニに咬まれた/咬まれたあとに発熱などの体調変化がある
  • ハチに刺された経験があり、次に備えたい

表町診療所でできること

当院は内科・呼吸器内科・アレルギー科のクリニックです。虫さされについては、特にアレルギーの視点からの評価と、刺傷後の全身症状(発熱など)に対する内科的な対応を得意としています。

ハチ毒アレルギーの検査

血液検査でスズメバチ・アシナガバチ・ミツバチに対する抗体を調べられます(保険適用)。抗体は刺されてから作られるまでに時間がかかるため、刺傷から1か月ほど経ってからの検査をおすすめします。

エピペン®の処方・使い方の指導

適応が認められる方には保険診療で処方します。在庫の都合上、受診の4〜5日前までにお電話でご連絡いただけると院内でご用意できます(ご連絡なしの当日ご希望は院外処方となります)。

マダニ咬傷後の発熱などの内科的評価

必要に応じて血液検査を行い、専門医療機関と連携します。

皮膚科での処置が望ましいケースは、適切な医療機関をご紹介します。

「全身に症状が出て心配」「ハチに刺されるリスクが高く備えたい」「マダニに咬まれたかもしれない」といったお悩みは、どうぞお気軽にご相談ください。岡山市北区のかかりつけ医として、呼吸器専門医・アレルギー専門医が丁寧に対応いたします。

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